で、『発想する会社!』のこと。なかば自慢話。
個人的には『発想する会社!』は非常に思い入れの強い本。どうすれば革新的なアイデアを生む組織が作れるのか、ということに関して、人類学的な観察手法、ブレストのしかた、迅速なプロトタイプづくりなど、具体的なやり方を明かしている本である。
歴史の長い会社というのは、どうしても官僚的・建前的になりがちで、小回りが利かなくなってくる。いいアイデアが出ないわけではないが、それを実現化するまでの障害が多く、正直新しいことをするのがめんどくさくなってくるのだ。本書刊行の2002年当時、そういう閉塞感を感じていたときに、この本の手法にとても明るい理想を見たわけだ。基本的に、僕がビジネス書を担当するときには、この本が自分の会社に役に立つ!と思うものを出すようにしている。
本づくりに当たっては、原書には図版が少なくほとんどモノクロだったのだが、自分で拙い英語で著者のトムさんにメールを書いてやりとりし、結果写真や図版の数を倍増させることができた。また、当時日本のIDEOの代表だったデザイナーの深澤直人さんと打ち合わせしたり、まあ、そんなことをやっていたせいで、販売延期というあるまじき失態も犯してしまったし、カラー刷りなので制作費もかかるのだが、結果、多くの読者の方に読んでもらうことができ、中には私に(!)会いにこられる某有名企業の方もいらっしゃった。
そして、その年の夏には著者のトム・ケリーさんも来日し、新聞・雑誌の取材を受けてもらったり、書店を表敬訪問したりした。とても気さくな紳士で、おしゃれで、かっこいい人だ。当時としてはまだインテリ玩具だったiPodを僕に見せて、「これに僕の大好きな80年代ミュージックがいっぱい入ってるんだ。カルチャークラブとか知ってる?」と自慢していたのがなつかしい。そして、日本語版について、アメリカ版よりビューティホーだよ!とお褒め頂くことほど、翻訳書の編集者にとってうれしいことはない。帰りには100冊くらい買っていかれたと思う。まあ、ダンボール2箱くらいになるので船便で送ることになったのだが。
この本がいまだに結構な数売れていて、こうして著者が呼ばれたりするのはとても嬉しく思う。そしてこの本の担当をしたことが、もう一つの「出会い」をももたらすのである。
(次回に続く)
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