10月の文芸エンタメ『人生最高の10のできごと』
(長文です、すみません。お急ぎの方は★★★★★の印まで飛ばしてください)
あれは10年前、わたしが高校を卒業し、上京したばかりのこと。
初めての一人暮らし、初めてのバイト、そして初めての携帯電話。
テレビ禁止の実家で育ったわたしは、本当に世間知らずでありました。
ある日、めったに鳴ることのないわたしの携帯に着信が。
見知らぬ番号で「英会話と海外旅行に興味がある人に得するお話があります」という。
この手の電話は今なら3秒で切らせていただくのですが、世間知らずで友達も多くなく、かつ好奇心でいっぱいだったわたしは話に乗っかって、いつのまにか電話の主と会いに行くことに。
(それと、電話の主の話し方がとてもうまかったので、その話術を盗んでやろうと思ったのもありました)
で、待ち合わせ当日。
昼下がりの渋谷(初めて行った)に現われたのは、見るからにホストと言うか、ギャル男というか、スーパーサイヤ人系の茶髪の殿方(以下、ギャル殿)でした。
もちろん今までの人生でそんなタイプと運命が交差したことがなかった私は、即座に逃げ出したくなりましたが、せっかくなのでもう少し見届けよう、とギャル殿のオフィスへ着いて行きました。
ちょっとしたカフェふうの広い部屋にはあちこちにテーブルと椅子があり、何人もの男女がそれぞれ話しています。わたしとギャル殿も着席し、飲み物が出されて、世間話からいつのまにか勧誘へ。
ようするに「会員になって毎月一定額を支払うと英会話の講習がお得に受けられて、海外旅行や留学も格安になって、さらにジュエリーも…」みたいな話でした。
ギャル殿はわたしが断わるたびに「あ、そう? じゃあさ…」と話を切り替え、世間話→勧誘の波状攻撃をたくみに繰り返します。こっちも頑固に断り続け、双方疲れ果てて、「じゃあ気が変わったら電話して」と解放してもらえたときには、5時間半が過ぎていました。
外に出てみるとすっかり夜。
渋谷の夜景をバックに、激闘を終えたサッカー選手がユニフォームを交換するように、わたしとギャル殿はがっちり握手で健闘をたたえあったのでした。
このときの5時間半の世間話の中で、唯一わたしの記憶に残っていたのが、ギャル殿が「この本は絶対感銘を受けるから」と教えてくれた本。
帰り道、この日の記念にと買って帰りました。
いまとなっては本がどこかに行ってしまい、書名も覚えてないのですが、
「天国はない、死後にあるのは無だけ」⇒死ぬのは怖い
「天国はある、死んだあとはハッピー」⇒死ぬのは怖くない、もし天国がなかったとしてもそれを知ることはないので無問題
だから、天国はあると考えたほうが幸せじゃん! というような内容でした。
天国があるかないかはわかりませんが、イソラ文庫の10月の新刊は、天国に行ったばかりの女性が主人公。
彼女は天国で「人生最高のできごと」を挙げる作文を書くのですが、わたしが今この作文を書くとしたら、上記のギャル殿との遭遇をそのひとつに数えるつもりです。
その理由は、この本を読んでいただけばわかるはず……。
★★★★★
10月の文芸エンターテインメントは、『人生最高の10のできごと』(アディーナ・ハルパーン著/田辺千幸訳/定価798円)。
昨夜、29歳で死んだばかりの主人公アレックスは、気がつけば天国にいました。そこでは、なんでも想像するだけで手に入り、食べ物は食べても太らない、家は散らかしても勝手にきれいになるすばらしい場所。でも、それはここが最高の第七天国だから。突然現われた守護天使がアレックスに問います。あなたはせいいっぱい良く生きようとした?
第七天国は困難を耐え、世界を変えようと努力した善人たちのもの。アレックスは自分がそこにふさわしいことを証明するため、自分の人生を振り返り作文を書くことになります。課題は「人生最高の10のできごと」。
ママのおなかに入った日、一生の親友と出会った日、初めて男の子とキスした日、自分ひとりの力で仕事を手に入れた日……アレックスは人生を振り返り、ターニングポイントになったできごとを挙げていき、そして最後に大切なことに気づきます。
コミカルに、ときにシリアスに描かれるひとりの女の子の人生経験には、誰でも多少おぼえがあるはず。たくさん笑って、最後にしんみりあたたかい涙が出るような物語です。ぜひお手にとってみてください。
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『人生最高の10のできごと』詳細ページ
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